肩関節の機能解剖 –基礎知識から臨床のポイント–

肩関節の機能解剖 –基礎知識から臨床のポイント–

肩関節の特徴

肩は多軸関節であり、そのため人体で最も自由度の高い関節となります

自由度が高いため可動性はあるものの、代償として安定性が低くなっています

不安定ではありますが、腱板や肩甲骨の固定性、アウターマッスルなどの作用によって肩関節は協調的な運動が可能となっています

肩関節の病変は肩甲上腕関節に多いといわれています

肩関節複合体

上腕骨、肩甲骨、鎖骨による骨性の要素に加え、それらに付着する各軟部組織によって構成されています

また、肩関節は解剖学的な関節機能学的な関節に分けられます

解剖学的な関節

・肩甲上腕関節

・肩鎖関節

・胸鎖関節

機能学的な関節

・C-Cメカニズム

・第二肩関節

・肩甲胸郭関節

肩関節複合体と表現するだけあり、筋が個別に働くことはほとんどなく、各筋が協調的に働き関節運動が行われます

反対に、一つの筋の機能障害が起こるだけで、肩関節は機能不全を起こす場合もあります

肩甲上腕関節

上腕骨の凸状の骨頭と肩甲骨の凹状の浅い関節窩から形成されます

関節窩に対して上腕骨頭は大きいため、不安定な関係性ですが、関節周囲の軟部組織によって安定性がもたらされます

肩甲上腕関節の安定化機構

静的安定化機構

・関節唇

・関節包、関節包靭帯

・関節内圧が陰圧

☝️関節包靭帯は上・中・下上腕靱帯に分けられます

肩甲骨面上で約45°外転した肢位が関節包の緊張が最も均一な状態となるといわれています

動的安定化機構

・腱板

・上腕二頭筋長頭

・肩甲骨と胸郭の間に位置する筋組織

腱板による骨頭を関節窩に対して求心位に保持する機能に加え、三角筋の強力な回転作用によってフォースカップル機構が成り立ちます

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第二肩関節の存在

肩峰と烏口突起、烏口肩峰靱帯から構成される烏口肩峰アーチと上腕骨頭によって構成されています

役割

・上腕骨頭の上方への変移を抑制する

・棘上筋の支点形成力を高める

・大結節がアーチの下を円滑に通過するよう促す

 つまり、肩甲上腕関節の機能の向上に作用しています

烏口肩峰アーチと大結節

0°〜80°:大結節は烏口肩峰アーチより外側

80°〜120°大結節は烏口肩峰アーチの直下

120°〜:大結節は烏口肩峰アーチより内側

80°〜120°でインピンジメントが生じやすいことを示唆します

肩甲胸郭関節

肩甲骨と胸郭から構成され、機能としては以下のものが挙げられます

・肩関節の可動域拡大

・肩甲上腕リズム

・肩関節の筋力増大

肩甲骨は上腕骨の質量より質量的には軽いため、肩関節の運動では上腕骨側に引っ張られるはずです。しかし、肩甲骨は肩甲骨周囲筋により鎖骨や胸郭と一体化することで、機能的に上腕骨より質量は重くなり、上腕骨(肩関節)の運動を最大限に引き出すことが可能となります

胸鎖関節

肩甲帯と体幹を接続する唯一の解剖学的関節であり、鎖骨の動きの支点となります

胸鎖靭帯や肋鎖靱帯の拘縮により、鎖骨の挙上や伸展が制限され、結果、肩甲骨の内転まで制限されます

肩鎖関節

肩甲骨の運動の支点となり、肩鎖靱帯や烏口鎖骨靱帯によって安定化されます

High arch test:他動的に160°以上の最大屈曲を行なった場合に肩鎖関節部分に疼痛が誘発される場合は肩鎖関節内の病変が疑われます

C-Cメカニズム

C-Cとは烏口鎖骨靱帯(菱形靱帯・円錐靱帯)のことをさします

肩関節の運動では胸鎖関節を支点に鎖骨の運動、肩鎖関節を支点に肩甲骨の運動も生じています

これらは烏口鎖骨靱帯によって調節され、烏口鎖骨靱帯に加わる張力は鎖骨−肩甲骨間の運動の伝達を担います

臨床のポイント

腱板疎部烏口上腕靱帯の拘縮は可動域制限との関係性が強いとされています

◎烏口上腕靱帯および周囲組織が疼痛の発現部位、または外旋可動域制限の起因部位

◎外旋可動域や挙上制限の主原因は、腱板疎部の瘢痕化烏口上腕靱帯の伸長性低下

◎凍結肩の腱板疎部と烏口上腕靱帯の病理学的所見が線維性変化によるもの

などの研究報告が出ています

腱板疎部

棘上筋、棘下筋の間にある間隙で、薄い膜状の組織です

腱板の緊張や歪みの緩衝であったり、腱板の摩擦減弱の役割を担っています

烏口上腕靱帯

烏口突起から大結節と小結節に付着し、疎性結合線維が多くを占めるため、伸長性の高い靱帯です

瘢痕化によって、外旋可動域の制限が顕著に出現します

腱板疎部と烏口上腕靱帯は肩関節の運動に大きな影響を及ぼすため、評価・治療のキーポイントとなります

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