運動によるダイエットをしながら筋肉と基礎代謝量を高めることは本当にできるの?

運動によるダイエットをしながら筋肉と基礎代謝量を高めることは本当にできるの?

「ダイエットして体重を落としつつ、筋肉をつけることで基礎代謝もあげて、リバウンドしにくいカラダになる!」

こんなにも都合のいいことってヒトのカラダで起こり得るのでしょうか?

 

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理学療法士

筋トレをしたら、体重を減らしつつ筋肉をつけることができますよ

私も実際に、患者さんへ似たようなことを言わざる得ないときがあります

しかし、本当に「体重を減らしつつ、筋肉量を増やすことで基礎代謝を上げ、リバウンドしにくいカラダを作る」ことは実現は可能なのでしょうか?

答えは・・・

ほぼ不可能(≒可能性は低い)と考えます

ダイエットしつつ筋肉量を増やすことはできるのか

筋肉をつけるには

1.十分なタンパク質を摂取

2.(高強度の)レジスタンストレーニングを行う

「十分なタンパク質を摂取」と「(高強度の)レジスタンストレーニング」を組み合わせることで筋肉のタンパク質分解よりも合成が上回ることが予測されます

レジスタンストレーニングとは

「最大筋収縮の60〜100%の強度を1〜15回程度行うトレーニング方法」です

脂肪を落とすには

3.有酸素運動を行う

4.糖質制限

「有酸素運動」と「糖質制限」によって脂肪蓄積よりも分解が上回ることが予測されます

「脂肪を落としつつ、筋肉をつける」には”1〜4”の項目を組み合わせを実践する必要があります

しかし、極端ではありますが、1日に卵を3〜4個食べ、脂質を抑えた牛乳を2〜3リットルを飲むことで十分なタンパク質を摂取しつつ、糖質は制限する。加えて、有酸素運動とレジスタンストレーニングを継続して行うことができる方はよほどストイックな人でしょう

おそらく「ダイエットしつつ、筋肉をつけたい」とおっしゃる方の99%はこの食事コントロールとトレーニングを実践することはできないと思います

そもそも、このようなストイックな行為は健康的なのでしょうか?


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筋肉と基礎代謝量

基礎代謝量(Basal Metabolism)とは

基礎代謝量/ Basal Metabolism / BM /

心身ともに安静な状態の時に生命維持のために消費される必要最小限のエネルギー代謝量

何もせずじっとしている時でも、体は生命活動を維持するために、心拍や呼吸・体温の維持などを行っていますが、基礎代謝量(単に基礎代謝ともいいます)はこれらの活動で消費される必要最小限のエネルギー量のことです

引用元:厚生労働省 生活習慣病予防のための健康情報サイト

 

一般的には、1日の総エネルギー消費量の約50%を基礎代謝が占め、食事誘導性熱代謝が約10%、残りの10〜40%が生活活動代謝となると言われています

女性(20代):1日の平均基礎代謝量:約1,100kcal

男性(20代):1日の平均基礎代謝量:約1,500kcal

筋肉1kgあたりのエネルギー消費量は13kcal

脂肪1kgあたりのエネルギー消費量は4.5kcal

例えば、運動やトレーニングによって筋肉量が1kgも増えた場合、エネルギー消費量は+13kcalとなります

一方、ダイエットによって脂肪が3kg減った場合は、エネルギー消費量は−13.5kcalとなります

つまり、筋肉が1kg増え、脂肪が3kg減った時点で、筋肉量の増加で得たエネルギー消費量は相殺されてしまうことになります

このことから「ダイエットして体重を落としつつ、筋肉を増やすことで基礎代謝を上げて、リバウンドしにくいカラダをつくる」は実現が難しいと言えます

余談ですが、脂肪のみが4kg減った場合、エネルギー消費量は−18kcalとなり、1ヶ月で約540kcalエネルギー消費がされにくくなる計算になります

カルビーのポテトチップス(うすしお味)は100gあたり554kcal

スーパーで売られているポテトチップスは1袋60gなので、約1.5袋分のエネルギーが消費されにくいカラダになると言えます

運動やトレーニングによって 脂肪が変化して筋肉になる は大きな間違いです

脂肪が燃焼されることで体脂肪が減り、筋肉は肥大することで筋肉量が増えます

・・・と、ここまではあくまで理論上の話です

体重が減少したら身体は動かしやすくなり、同じ運動でも心肺機能や筋肉の疲労感も軽減されることが予測されます

同じ疲労感でウォーキングをするとなると、歩くスピードは上がり、エネルギー消費量も増えます

自己効力感も上がるでしょうし、体力(持久力)も上がることで、(生活)活動時のエネルギー量も増え、結果として総エネルギー量が増加することが予測されます

そうなると結果的にダイエットによって”減量に伴い低下した基礎代謝”を補うことは十分可能です

運動習慣が身につくことで、筋肉量が増えるといった正のサイクルに入ることもありえます


結論は・・・

「タンパク質を摂取して筋トレをしたら、体重を減らしつつ筋肉をつけることができ、代謝もあげることができる」という都合の良すぎる説は実現が難しいことがお分かりいただけたでしょうか?

そもそも、”ダイエットしながら基礎代謝を高める”ということ自体が間違っていると言えるのではないでしょうか

私も含めて、専門職の方は無責任に非実現的なことを話してしまいがちな印象にあります

いい部分だけを切り取って、貼り付けてしまわぬよう気をつけていきたいですね

 

参考・引用文献:田中喜代次 他・減量しながら筋肉量および基礎代謝量を高めることは可能か?:体力科学 第66巻.201-212(2017)

 

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