栄養はリハビリのバイタルサイン?【低栄養とリスク管理】
栄養はリスク管理?
リスク管理といえば「バイタルサイン(Vital signs)」が真っ先に頭に浮かぶと思います
血圧や脈拍、呼吸、体温、他にも意識レベルなどが臨床でよくチェックしている項目だと思います
他にはありませんか?
「栄養はリハのバイタルサイン」
といった言葉も存在しています
バイタルサイン≒生命徴候、リスク管理をするうえで「栄養状態」もチェックしておくべき項目です
低栄養
低栄養とは「身体を動かすために必要なエネルギーやタンパク質、健康維持に必要なビタミンなどが不足している状態」のことをいいます
栄養障害の原因
◎飢餓:エネルギー摂取量<エネルギー消費量
◎悪液質:慢性疾患(癌・感染症・膠原病・心不全・腎不全・呼吸不全・肝不全)
◎侵襲:手術・骨折・感染症・熱傷・外傷
高齢者の低栄養は回復期病棟、介護施設で多いという報告もあります
65歳以上を対象とし、平均82.3歳 MNAを使用して低栄養を判定した際
一般病棟では38.7%、回復期病棟では50.5%、介護施設では53.3%
参考文献:Kaiser MJ他:JAGS 58:1734-38,2010
回復期へ入院、介護施設へ入所者の半分以上が低栄養状態であったことがわかります
【MNA(簡易栄養状態評価表)】
・65歳以上の高齢者の栄養スクリーニングと栄養アセスメントに用いられる
・体重および体重の減少が不明でも点数をつけられる
・栄養状態を把握する項目以外に認知症、寝たきりに関する項目が入っている
【MNA-Short Form(6項目)】
・過去3ヶ月の食事量減少
・過去3ヶ月間の体重減少
・過去3ヶ月間の精神的ストレスと急性疾患
・神経、精神的問題
・自力歩行
・BMI
体重減少率(%)=(通常時体重ー現体重)÷通常時体重×100
上記の体重減少がみられると、中等度以上の栄養障害を示唆
例)体重50kgの患者さんが3ヶ月で46kgに減少した場合
(50−46)÷50×100=8.3% ⇨ 中等度以上の栄養障害を疑う
低栄養状態における筋トレの弊害
◎適切な栄養管理・栄養状態が良好な場合、エネルギーが充足しているので、摂取したタンパク質が筋肉の合成に利用されます
⇨ 積極的な運動療法によって筋肉の増強が望める
◎不適切な栄養管理・低栄養の状態の場合、エネルギーが不足しているので、筋肉を分解しエネルギー生産します
⇨ 積極的な運動療法によって筋肉が減少する恐れ
栄養アセスメントのポイント
栄養状態を表す血液検査値の表にまとめました
体重の状態や血液検査データはカルテですぐに確認できると思いますので、担当患者さんの栄養状態をチェックしてみてください
栄養補助食品について
言語聴覚士を除き、療法士は知らなくても良いことかもしれません
しかし、知っておくことで、栄養課のスタッフと話し合うこともできますので、有名どころの特徴程度は知っておいて損はないと思います
◎メディミルプチ・ロイシンプラス
特徴:少量で高カロリー、ビタミンやミネラルはほとんど入っていない
比較的味が良くて飲みやすい(※美味しくはなかったです)
◎アルジネード
特徴:ビタミンが豊富に含まれている
褥瘡の治癒過程に重要なアルギニンが配合されている
酸味が強い(※独特な匂いがしました)
◎プロテインゼリー
特徴:タンパク質・ビタミンが豊富に含まれている
カルシウム・鉄・亜鉛なども含まれているため、貧血や褥瘡がある場合も効果的
味が良い(味も豊富なので食べやすかったです)
◎メイバランス1.0
特徴:1本200mlで200kcalなので、胃袋が大きい方が対象(1回に2本以上)
脂質の割合が少ないため、消化吸収の調子が悪い場合に適している
(The・補助食品といった味がしました)
◎メイバランスHP1.5
特徴:1本200mlで300kcalあり、タンパク質も豊富に含まれている
一方、タンパク質が多いため、腎機能が低下している場合は適さない
(メイバランス1.0と同様に美味しくなかったです)
栄養摂取のタイミング
栄養摂取は「運動直後が有効」とされています
栄養補助食品は食事に加えて出されることが多いですが、看護師や栄養士と話し合い、摂取するタイミングをリハビリ後にも設けられると「筋肉の増強」の面では効果的です
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