膝関節の機能障害 ー最適な運動療法の選択ー
変形性膝関節症患者さんへのDr.からのリハビリ指示には”筋力の増強”や”関節可動域の維持・向上”といったものが一般的です
そして、 Dr.からの指示のもと、クアドセッティングやスクワット、関節可動域練習などを患者さんに指導、実施することがほとんどだと思います
しかし・・・
「階段の上り下りが痛い」「しゃがみ込みができない」「膝を曲げると痛い」「歩いていると痛い」
といったように症状や病態は様々です
機能障害に対して、指導した運動内容がかえって逆効果になってしまった経験はありませんか?
変形性膝関節症に対するリハビリ
変形性膝関節症に対して、個別の症状や病態に応じた最適な運動療法や指導を行うためのポイントをまとめました
まず、一般的に理学療法士が行っている指導例を挙げます
患者:「膝が痛みます」
PT :「痛みがでるのは、軟骨のすり減りと(大腿四頭筋の)筋力低下が影響していますね」
整形外科クリニックですら耳にする会話です
患者さんは ” 筋トレをしたい ” のではなく、” 痛みをなんとかしたい “ということ忘れてはいけません
問診内容を見直してみる
☝️疼痛について
・どこが?(部位)
・どのように?(種類)
・いつから?(時期)
・どういうときに?(タイミング)
・どうすると?(再現性)
・きっかけは?(出現原因)
・悪化するとき、軽減するときは?
・現在までの痛みの変化は?(経過)
・・・疼痛の問診内容を見直すだけでも、これだけ挙げられます。
まだまだ聞かないといけないことはありますが、最低限うえに挙げた内容は抑えておく必要があります
「リハビリして悪くなった」なんてことがならないように・・・
適切な問診は、安全にリハビリを行う上では重要です
今は” 動かすべき “なのか、” 安静を優先させるべき “なのか、” 軽く動かす必要がある “のか、適切な指導を行えることが求められます
運動指導
クアドセッティング
クアドセッティング(Quad setting)は正しく指導できていますか?
☑️大腿膝蓋関節のアライメントを確認し、下腿の前後方向の不安定性が確認できる場合
・タオルを大腿遠位に入れるのか、下腿近位に入れるのかの選択が必要
→タオルを入れることで大腿に対して下腿の位置を整えることができ、適切な筋力の発揮が得られやすくなります
☑️拮抗筋であるハムストリングスが同時収縮している場合
・ハムストリングス腱に圧を加え、拮抗筋の活動を抑制させる(Ⅰb抑制)
また、ハムストリングスの緊張を落とすようにストレッチを同時に行うことも必要
スクワット
☑️バックスクワット
・一般的な姿勢(フォーム)
体幹・骨盤が前傾
臀部は後方移動
足部より膝が前に出さない
💡重心線からの関節の距離は、股関節からは遠く、膝関節からは近い
→股関節伸展筋が多く働く(大殿筋・ハムストリングス)
臨床では立位時に骨盤後傾位をとっている場合、大腿四頭筋が伸長されている状態であり、膝関節前面に疼痛が出現しやすい ⇨バックスクワットが効果的
☑️フロントスクワット
・一般的な姿勢(フォーム)
体幹は垂直に近い
膝が前に出る
💡関節と重心線からの距離は、股関節からは近く、膝関節からは遠い
→膝関節伸展筋が多く働く(大腿四頭筋)
臨床では立位時に骨盤前傾位をとっている場合、股関節伸展筋・膝関節屈曲筋に負担がかかる
⇨フロントスクワットが効果的
診断名が同じであっても、病態から生じる機能障害が全く同じになることはありません
詳細な機能評価を行い、個々に適した運動療法、運動指導が行えるようにしていきましょう
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