筋トレの生理学【筋肥大と筋萎縮のメカニズム】
臨床の場面で患者さんの代替に入る時”○○筋の筋力低下があるので筋トレお願いします”と言われることが多いと思います
筋トレの効果として、筋力の増強や筋肥大、筋萎縮の予防などの効果が期待できますが、
そもそも【筋トレ】の生理学的なメカニズムは知っていますか?
筋力トレーニングの種類
運動様式(等張性、等尺性、等速度性)
筋収縮様式(求心性、遠心性、等尺性)
負荷様式(最大収縮負荷、最大反復負荷)
最大収縮負荷:最大or最大に近い、高負荷での筋力トレーニング
⇨筋肥大よりも大脳の興奮水準の増加による神経的な因子の改善に対する効果が期待できる
最大反復負荷:最大下の中等度の負荷で反復する筋力トレーニング
⇨神経的要因の改善よりも筋肥大に対する効果が期待できる
運動速度
スロートレーニング:きわめてゆっくりとした運動速度で行うトレーニング
⇨軽い負荷であっても、ゆっくり運動を反復し、筋の活動時間を長く保つことで、高い強度のトレーニングと同程度の効果が得られる しかし、筋収縮が早い運動を改善するには不向き
メカニズム:筋の収縮を長く持続させることで、筋内の血流が制限され、酸素飽和度の低下に伴って乳酸が生成され、その結果、成長ホルモンの分泌が上昇することによるもの
トレーニングの理論として「特異性の原則≒同類の運動によるトレーニング効果が高い」
例)「スクワットのトレーニングを行なった場合、等尺性収縮による膝関節筋力の増加効果よりもスクワットの筋力増加の方が効果が大きい」と研究報告があります
☝️セラピストがベッド上で膝伸ばしの抵抗運動を毎日10回やっても、歩行中の膝折れに対しては効果が薄いということです
筋力と筋肥大
最大筋力と生理学的筋断面積(筋肉量)とは比例関係にあり、年齢や体格にかかわらず理論上では一定の値をとると考えられます
しかし、若年者と高齢者では、同じ筋断面積(筋肉量)であっても高齢者の方が筋力は低い値を示します
これは、筋肉の線維タイプの割合や神経的要因が筋力発揮に影響しているためと考えられています
高齢者は若年者と比較して、最大収縮時における主動筋の活動の減少や拮抗筋の共同収縮の増加がみられる(神経的要因)といった研究報告があります
筋力増強のメカニズム
トレーニングの初期は「運動単位の動員」「運動単位の発射頻度」の増加といった神経的要因が主
トレーニングの4〜6週目以降では神経的な要因に加え、筋肥大を伴う筋力増強も期待できる
◎羽状角の増加による筋形態の変化も筋力増強には影響しているといった報告あり
◎近年ではトレーニング8週目以降になると、筋肉内の脂肪や結合組織の減少による筋の質的要因の改善効果が得られるといった報告もある
廃用性筋萎縮と筋力低下
活動量が低くなり、身体に廃用が生じる時に最も顕著に現れるのは筋萎縮と筋力低下です
◎加齢による筋萎縮:速筋線維(typeⅡ)が選択的に萎縮する
◎廃用性による筋萎縮:遅筋線維(typeⅠ)が優位に萎縮する
ベッドレスト(起居移動動作を行わない)状態にすると7日後から大腿四頭筋の筋萎縮が生じる
【身体活動量と筋量の維持】
◎筋量の維持には1日7000〜8000歩または15〜20分速いペースで歩く
大腿四頭筋の筋活動:ウォーキング6000歩≒スクワット250回、立ち上がり450回
◎自転車エルゴメーター約25分≒ウォーキング6000歩(大腿四頭筋の筋活動)
効果的なトレーニングとは
筋力トレーニングの負荷量は運動強度と運動量(セット数など)によって決定されます
「負荷量≒運動強度×運動量」
きわめてゆっくりとした運動速度で行うスロートレーニングでも、セット数を増やすことによって高い強度と同程度の筋肥大・筋力増強効果が期待できるため、ご高齢の方や入院患者さんにおいては、低〜中程度強度でのトレーニングを選択するほうが好ましいです
運動強度
ご高齢の方の筋力増強や筋肥大に効果的なトレーニング条件は
◎1RMの60〜80%の運動強度
◎Borg主観的運動強度スケールで15〜17(きつい〜かなりきつい)が推奨されているようです
しかし、この強度では筋骨格系の損傷や循環器のリスクが高くなることが予想できます
ご高齢の方に対しては
◎1RMの30〜60%の運動強度
◎Borg主観的運動強度スケールで13(ややきつい)程度を目安に低〜中程度のトレーニングが推奨
運動の頻度
高い強度でトレーニングを行う場合は週2〜3日の運動頻度が効果的とされています
低〜中程度のトレーニングでは運動頻度に関しての研究報告が少なく、明らかになっていないようです
しかし、筋力トレーニングが必要な患者さんへのリハビリは回復期の方が大まかな対象となってくると思います
回復期では毎日リハビリ介入するため、毎日が運動頻度となってきます
そのため、リハビリを行うときは、高い負荷での筋トレよりも低〜中程度の負荷の筋トレの方が良いというのは言うまでもないです
以上、簡単に”筋トレ”のメカニズムを紹介させていただきました
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