『サルコペニアとフレイルの予防』生活習慣病との関連性は?
- 2020.02.28
- カラダの痛み(部位別)
- サルコペニア, フレイル, 健康, 糖尿病
現在、日本における高齢者の割合をご存知でしょうか?
高齢者人口は3461万人、総人口に占める割合は27.3%と共に過去最高
65歳以上の高齢者人口は3461万人(平成28年9月15日現在推計)で、総人口に占める割合は27.3%となっています。前年(3388万人、26.7%)と比較すると、73万人増と大きく増加しており、人口、割合共に過去最高となりました。年齢階級別にみると、70歳以上人口は2437万人(総人口の19.2%)で、前年と比較すると、19万人増、75歳以上人口は1697万人で、59万人増となりました。また、80歳以上人口は1045万人で、前年と比較すると、43万人増となりました。
超高齢者社会に突入した日本では、65歳以上の高齢者が総人口の1/4以上を占めています
75歳以上の高齢者は1/8以上を占めており、高齢化はさらに進行し、2050年には75歳以上の高齢者が総人口の1/4に到達することが予測されています
人口の高齢化に伴って、今まで注目されてこなかった病気や病態がクローズアップされ、特に「認知症」「サルコペニア」「フレイル」に注目が集まっています
実際に「サルコペニア」と「フレイル」に関しては多くの学会やシンポジウムでも取り上げられてきています
「認知症」は多くのメディアで取り上げられているため聞き馴染みがあると思いますが、一方で「サルコペニア」や「フレイル」とはどういった病態なのか知らない、また、あまり聞いたことがないという方も多いと思います
サルコペニアと肥満
サルコペニアとは
サルコペニアとは「加齢とともに筋肉量が減少し”筋力”もしくは”身体機能(歩く速さやバランスなど)”が低下している状態」を指します
サルコペニアという用語は、ギリシャ語で筋肉を意味する「sarx(sarco:サルコ)」と喪失を意味する「penia(ペニア)」を合わせた造語です
加齢のみが原因の場合は「一次性サルコペニア」
活動不足や栄養不良、疾患(代謝疾患など)が原因の場合は「二次性サルコペニア」といいます
引用画像元:健康長寿ネット/サルコペニアとは
肥満とは
「BMI」「体脂肪率」「ウエスト周囲長」「内臓脂肪面積」が指標として用いられます
【BMI】
25kg /m2以上を肥満 [BMI=体重(kg)÷(身長(m)×身長(m))]
【体脂肪率】
男性:20%以上は軽度肥満、25%以上は中等肥満、30%以上を重度肥満
女性:30%以上は軽度肥満、35%以上は中等肥満、40%以上を重度肥満
【ウエスト周囲長】
男性85cm以上、女性90cm以上を内脂肪肥満
【内脂肪断面積】
腹部CT検査にて、へその位置で内脂肪の断面積が100cm2以上の場合
ウエスト周囲長の男性85cm以上、女性90cm以上は内脂肪断面積の100cm2に相当すると言われています
サルコペニア肥満
『サルコペニア肥満?』と思われる方も多いと思いますが、
加齢に伴って筋肉量は減少し、脂肪組織は増えます
筋肉量の減少は基礎代謝の低下や活動量の低下につながり、余剰な栄養成分が脂肪として蓄積されることは容易に想像できると思います
脂肪組織から分泌されるホルモンには食欲亢進作用(レプチン)、筋肉組織の分解作用(TNF)があり、筋肉量低下の原因になるとされています
サルコペニア肥満は単なる肥満と比べて、加齢に伴う筋肉量や脂肪量の変化に肥満症が加わった状態であり、サルコペニアと肥満を同時に有するため、身体機能が低下しやすい病態です
サルコペニア肥満による健康状態への影響
「転倒」「うつ状態」「歩行障害」「死亡率」などと関連性があるといわれています
サルコペニアも肥満もない方と比較すると
◎転倒は男性で3倍以上、女性で2倍以上
◎歩行障害は男性で4倍以上、女性で5倍以上
◎死亡リスクは1.72倍(サルコペニアのみでは1.41倍)
参考文献:富島弘一・他:Journal of CLICAL REHABILITATION Vol28(2019)
サルコペニアと生活習慣病
サルコペニア肥満と糖尿病
糖尿病について詳しくは、『糖尿病の基本的な知識と運動療法』をご覧ください
インスリン分泌量の減少やインスリン抵抗性によるインスリン作用の不足によって筋肉のタンパク質合成は低下し、筋肉量減少の原因になります
⇨ 糖尿病はサルコペニアへの原因にもなり得る
反対に、サルコペニアは筋肉量が減少し、活動量が減少するため、脂肪組織が蓄積し、インスリン抵抗性を高めます
⇨ サルコエペニアは糖尿病の原因にもなり得る
つまり、両者は負のサイクル(悪循環)を形成します
単なる肥満患者に対して、2型糖尿病患者におけるサルコペニア肥満の有病率は3.3%高いといった研究報告もあります
サルコペニア肥満とメタボリックシンドローム
メタボリックシンドロームいわゆる”メタボ”は内臓脂肪の蓄積を基盤として、糖や脂肪代謝異常、高血圧などといった代謝異常を合併します
メタボリックシンドロームの診断基準
腹囲による内臓肥満蓄積+基準値以上の「高血圧」「高脂血症」「高血糖」が合併することで診断されます
サルコペニア肥満は単なる肥満やサルコペニアに比べて、メタボリックシンドロームのリスクが高いといった研究報告もあります
フレイルとは
フレイルとは「加齢とともに生理的機能や身体活動性、健康状態を維持するためのエネルギー予備能力の低下によって、様々なストレスに対して健康障害などを起こしやすい状態」を指します
サルコペニアに比べて分かりにくく、敬遠しがちですが、要するに
「加齢よって身体の予備能力が低下し、健康障害に陥りやすい状態」ということです
フレイルは「体重減少」「筋力の低下」「疲労感」「歩行速度低下」「身体活動低下」の項目のうち、”3つ以上”が該当するとフレイルと診断されます
注目すべきは「歩行速度の低下」「筋力低下」がサルコペニアの診断基準が重複している点です
つまり、サルコペニアと診断された高齢者はフレイルである確率が高いことが予測できます
フレイルは「自立」と「介護状態」の間に位置し、「フレイル状態とは”可逆的”である」ということが重要なポイントです。適切な介入によっては「自立」へ戻すことも可能です。反対に放置したら介護状態へ移行してしまいます
日本の高齢化
日本の高齢者割合は、主要国で最高
主要国の中で平成28年の高齢者の総人口に占める割合を比較すると、日本(27.3%)が最も高く、次いでイタリア(22.7%)、ドイツ(21.4%)などとなっています。日本の高齢者割合を平成7年及び平成17年と比較すると、12.7ポイント増、7.1ポイント増となっており、主要国の中で高齢化の進行が早いカナダ(4.7ポイント増、3.5ポイント増)、イタリア(6.2ポイント増、3.2ポイント増)と比較しても、最も高齢化の進行が早くなっています
【高齢者人口の割合の国際比】
画像引用元:総計局ホームページ/平成28年/高齢者の人口
他の国と比較しても圧倒的スピードで高齢者は年々増え続けています
この増加を食い止めることはほぼ不可能に近いです(第3次ベービーブームが来ない限り)
現在、平均寿命と健康寿命の間には男性で約9年、女性で12年の差があると言われています
この差を縮めることが自分たちの負担を減らすことにつながります
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